香港で逮捕された時、するべきこと

アンディ・チェン法律事務所より

アンディ・チェン法律事務所のレポートです。

香港で逮捕された時、するべきこと

 あなたは、自分は犯罪を犯さないので、自分には全然関係ない話と思われますか。

 まずこのコラムを読んだあなたは、これだけは覚えておいてください。万が一、万が一、逮捕された場合は、警察署、ICAC、税関からすぐにでも弁護士に連絡し、弁護士が来るまで供述をしないことです。これは私が弁護士だから言っているのではなく、そうするのがあなたにとって本当に得策なのです。

1.はじめに

もしも香港で逮捕されたら、あなたは適切に自分の身を守ることができますか。私たちは普段、逮捕されるかもしれないなどと考えもせず生活しているでしょう。

 しかし実際には、日本人が香港で逮捕されたケースを見聞きしますし、実際に今まで多数の日本人の刑事事件の依頼を受けております。

私のこれまでの経験では、

-    日本では、弁護士が示談交渉をしてくれると聞いたことがあるので、とりあえず言われるままに署名した。

-    通訳に、『弁護士は高いから弁護士なしでも大丈夫。』と言われ供述署名した。現実は、特に駐在員の場合は、仕事も家庭も影響を大きく受けることとなり弁護士費用どころの話ではない。

-    自分は本当にその罪を犯していないので警察はきちんと調べたらきっと分かってくれるはずだ。と勝手に考えた。

-    全て日本の基準で考えた。

-    初めての事で、怒りや怯えにより逮捕された事実が受け入れられない。

-    自分なりの方法で解決できると考えた。

-    日本人のために、海外である香港での刑事起訴の重さをそこまで実感していなかった。

などで、最初の段階で弁護士に依頼しなかったケースを見聞きします。日本では、刑事事件の場合に弁護士が被害者と示談交渉を進める事が大きな仕事となっているようですが、ここは香港との大きな違いです。寧ろ、香港では、容疑者はもちろん弁護士も被害者に連絡することは禁じられており、司法妨害の罪となってしまいます。

2.香港における逮捕事情

 警察が逮捕に踏み切るときは、容疑者に対して「合理的」な疑いを持っているときです。「合理的」であるということが重要です。なぜなら、警察は法に基づき逮捕するからです。現行犯逮捕以外の場合は、警察の捜査によってあなたが容疑者となり警察が逮捕に踏み切る場合、もっとも多い時間帯は午前零時ごろです。ちなみにICAC(賄賂に関わる逮捕)は午前5時が最も多くなっているようですが、容疑者が家にいる可能性が一番高く、また容疑者の抵抗力が一番弱い時間帯だからです。逮捕されたあなたを警察は48時間ものあいだ拘留することができます。さらにこの拘留時間は特別な法律によって延長することができます。こうした時間に弁護士を探すのは大変ですので、経営者は、普段から顧問弁護士をお願いしておくと安心です。緊急であれば、夜でも、私は対応致しますので、代表番号に電話をしてみてください。

3.逮捕されたときの対処

①    逮捕された時点で弁護士にすぐ依頼する事の重要性

 警察官やICACスタッフから、万が一、『逮捕する。』という言葉を聞いたら、すぐにでも警察官に弁護士を依頼したい旨伝えるべきです。日本では警察の事情聴取時に弁護士が在籍することが認められないようですが、香港では異なり、弁護士の立会いは容疑者の権利で、一般的です。警察官の態度も違いますし、慣れない環境の中、自分の味方ができることで落ち着いて対応でき、不用意な発言を控えることが可能です。証拠のレベルによっては、弁護士の働きかけにより、起訴にならずに済むケースもあります。

 また起訴された場合であっても、起訴内容(charge)や事件の事実関係概要(Summary of facts or facts of the case)を早い段階で入手可能です。同様に、被害者証言、証人証言、政府ラボのテスト結果(例えば麻薬事件)、指紋やDNA鑑定、写真、防犯カメラの画像や検察側が起訴において使用するつもりがないが、被告にとっては役立つ証拠資料などの起訴の証拠書類を早く入手することができます。もちろん常習犯で慣れている人は違うかもしれませんが(笑)、普通の人はまずこれらの証拠を弁護士経由でなければ自分で入手できないでしょう。弁護士からの要請であっても警察はなかなか対応してくれなかったりします。証拠書類などの全ての資材を検討しなければ弁護士は適切なアドバイスができません。そういう意味でも、最初の段階から事件に立ち会っていることでよりベストなアドバイスが可能です。また、事件の資材を見てからでないと、罪を認めるかどうかの判断もできないと思います。

 更に、今まで一般的には認められていた、罪をどの段階であれ認めると刑期を1/3減らしてもらえていたのですが、2016年9月2日の上訴法廷(Court of Appeal)で、予備審問(Mension)の段階で認めると1/3刑期が短くなるが後の段階になってから認めれば認めるほど刑期の短縮がなくなるという判決が出ました。この判決により、更に、事件の資材を早く集める重要性が出てきました。

② 冷静さを守ること

  これが最も大切です。警察は合理的な疑いをもって逮捕に踏み切ります。そこであなたが大きく抵抗したり暴力をふるったりすれば、警察に容疑者を逮捕する口実をさらに与えてしまうことになります。

③   自分がどのような罪で逮捕されたのかを警察に聞くこと

  まずは状況を把握しましょう。

④   不用意に話さないこと

  容疑者には黙秘権があります。警察官も容疑者に対して必ず次のようなことを話します。「あなたが話したいことを除き、話す義務はありません。ただし、あなたが話した内容は将来裁判所に証拠として提出されます。」多くの方は、①逮捕の事実や警察の勢いに脅かされたこと ②準備不足であったこと ③緊張と不安 ④早く警察署を出たいという気持ち ⑤法律の不知(黙秘権など)などの理由から自ら不利な供述をしてしまいます。しかしこれは絶対にしてはいけません。警察署でペラペラと自分の無実或いは自分のストーリーを供述し署名することは非常に不利になりえますのでご注意下さい。近時の裁判所は極度の緊張や勘違いや警察の脅しによって事実と異なることを話してしまったという言い訳を認めません。そのため、取り調べで供述してしまったことを裁判で覆すことは非常に難しいことになるからです。

 ⑤ 弁護士を呼びましょう

  弁護士を呼ぶことは容疑者に認められた権利です。③で述べたように自分に不利な供述をしないよう、弁護士(ソリスター)と相談して作戦を練ってから供述すべきです。

4.弁護士との面会、そして供述

 弁護士が警察署に来れば、弁護士と容疑者だけで個室で話すことができます。誰にも聞かれないようになっていますから、自分の主張を正直に弁護士に伝えるべきです。供述のときには正式な政府通訳者がつくため、言葉の問題はほとんどなくなります。

 

6.その後の流れ

 凶悪な事件(殺人など)でなく、証人を脅したり逃亡したりする恐れがないときには、弁護士(ソリスター)の保釈要求により容疑者は保釈を許されます。保釈金の金額や保釈の条件は容疑者によって異なります。また保釈中であっても、容疑によっては、パスポートを没収されず海外への渡航も認められることもあります。保釈の間に警察は引き続き調査を行い、証拠の量と質により、起訴するかどうか決定します。もし警察が起訴する決定をした場合、その後、裁判となります。罪を認めるかによりその後の行動が異なります。通常、弁護士(ソリスター)が探すバリスターと共に、裁判のための対策を考えることになります。

 香港での警察の対応は広東語がほぼ必須ですので、私の様に日本語が出来る弁護士は通訳が要らず直接的に対応が可能ですし、時間も費用も抑えられます。万が一、香港で逮捕されてしまった場合は、警察署やICACの取り調べの段階から私に連絡を下さい。それが最も、精神的にも経済的にも被害を最小化出来る手段です。

アンディ・チェン法律事務所 | 日本語対応可能な香港の法律事務所

香港で逮捕された時、するべきこと
The Hong Kong Japanese Chamber of Commerce and Industry 2025年9月1日
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